「大きな土地」で国づくり

先日、NHKの特報首都圏「本気で社会を変えたい~“ソーシャルイノベーター”たちの闘い~」を見て、心に着火する音が聞こえました。やはり僕の活動は、そろそろ表に出て社会を巻き込んでいく段階に、進むべきだと思い立ちました。今日はさっそくFacebookで勝手に宣言し、まずは身近なキーパーソンに連絡をして導火線に火をつけました。まずは、僕の目指す「ソーシャルイノベーション」について、簡単な説明を試みたいと思います。もちろんそれは、土地資源の活用に関する革新です。あまり長文にならないよう頑張りますので、お付き合いください。

いま日本では、行政主導の社会改革が行き詰まり、民間主導への移行が急務です。ところが、新たな事業を生み出すのに不可欠な「制約のない自由なチャレンジができる場所」がほとんどありません。そもそも公有地は、私的な生活や事業の場ではありませんし、民有地の多くは誰かに占有され、使われていなくても入ることすらできません。そしてもし、使えたとしても高い場所代を支払った上に制約だらけで、自由なチャレンジなどできません。これが僕の問題提起です。儲かるビジネスだけが高い家賃を払って一等地に店を構え、さらに大きな利益を上げていく一方で、利益の少ないビジネスはいつまでも物陰の小さな部屋でひっそりとやっていくなんて、僕には納得できません。なぜなら、今場所は、そこらじゅうで有り余っているのだから。

そこで、「大きな土地」の所有者に呼び掛けて、自由なチャレンジに対し、余った場所を開放したいと思います。そして、個人のビジネスの創出や生活の再建、社会参加の促進など、行政が担うことのできない「民有地でのくにづくり」に挑むのが、僕の提唱するイノベーションです。考えてみると、江戸時代までは諸国の大名が与えられた領地から得られる資源だけで国を作り、経営していました。すべての地域に中核都市を拠点とした自立経済があり、ほとんどの藩は助成金をもらうどころか、逆に多くの資金や役務を上納していたわけです。現在都道府県庁所在地となっているような地方都市の豊かな個性は、その地域で調達できる資源を使って独自の発展を遂げたからに他なりません。正確には領主が領土を所有していたわけではないにしろ、自由な裁量で土地という資源をフルに活用していたのは間違いありません。地域再生など、官主導でいくらやってもらちが明かないのは、そもそも土地所有者主導で行うべきことなのかもしれません。

やがて列強諸国の侵略に対抗する富国強兵の実現のため、明治維新を経て、日本は一元統治をおこなうようになりました。しかし、民有地の所有は民主化の名のもとに細分化が進み、個人所有者の裁量に任され、自由に売買されるようになりました。これが、経済成長の原動力となったことに疑いの余地はありません。しかし、成長が鈍化し土地価格の上昇が終わったところで、土地所有者たちはこれを持て余すようになりました。振り返ってみれば近代以降「国づくりは政府の仕事」よなり、誰も「民間による国づくり」を考えも学んでも来ませんでした。現在の日本には、土地所有者の権利や義務について定める法律はなく、土地所有者を管轄する官庁も存在しません。民有地所有者が、「所有権を放棄(売却)せずに行使する術」を知らないのは無理のないことかも知れません。

僕は、起業支援活動の中で田名夢子氏と出会い、このことに気付きました。「自分の土地をどうしようと自分の自由のはずなのに、そのやり方について相談に乗ってくれる人がどこにもいない」というのです。そこで田名氏は、これを起業と位置付け、僕のもとを訪れました。笑恵館という事業の核心は、永続的な事業にするために、法人に所有権を移転し、所有者が不死身になるということです。そのために、二人で日本土地資源協会という一般社団法人を設立し、現在笑恵館の所有権をこの団体に実質無償で貸与しています。つまり、僕も団体メンバーとして所有当事者になったわけです。現在笑恵館の運営は、この協会が中心となり、有志のメンバーが相談しながら決めています。笑恵館という小さな国を、小さな政府が治め始めているんです。

この経験から現在二つの事業を展開しています。一つは笑恵館周辺エリアでの住み開きの推進。住宅の空き部屋を住みながら開放して、所有者だからできる新たな活用法を模索しています。そしてもう一つは、名栗の森オーナーシップクラブ。オーナーシップクラブとは「会員制の土地所有」のことで、これまで放置されてきた個人所有の山林を、クラブのメンバーになることで所有者として利用できる仕組みです。これらはいずれも、メンバーが所有者の裁量を付与されることで、自由な土地利用を実現する試みです。こうした活動を通じて、僕の提唱するイノベーションの実現に向け、確かな手ごたえを感じています。

そこでいよいよ、この提案をわかりやすくまとめて、「大きな土地」の所有者に届ける段階を迎えました。しかし、こうして書いた文章を読み直してみると、まだまだ分かりにくく、前途は多難です。きっと、これを打開するにはもう自問自答はやめ、様々な人たちに実際に問いかけ、意見を聞くことだと思います。そう、今日はこの結論を書きたくて、手探りで説明を試みました。せっかく「大きな土地」を持っているのに、それを生かしきれずにいるなんて悔しいことだと思います。土地は「国づくりの資源」です。ご自分の土地を使って、何かをやってみたい方。何かを実現するために、「大きな土地」のオーナーを口説きに行きたい方。「大きな土地」に特段の定義はありませんが、もったいないと思えば、それが「大きな土地」だと思います。

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