地主の事業化

地主の事業化とは、土地に対する所有者の願いを実現するための仕組みを作ること。
実は今、ふきの庭の事業化に向けて詰めの作業に入ったので、この場を借りてまとめの作業を行いたい。
まず、所有者の願いは「ふきの庭を維持存続させること」で、それを実現するための仕組みとは、「願いを共有する仲間」を募り、必要な作業従事者への報酬や必要経費を捻出する仕組みを作ること(業務化)。
そこでまず、明治29年(1896年)に曾祖父が暮らし始めた当時のままの姿で引き継いだ古民家を修繕して、「ふきの庭」と名付けてイベントや撮影にレンタルし始めた。
さらに昨年、90年以上前に建てられた借家を買い戻したので、若干間取りを変更し、「maisonふき」として賃貸するために僕が住み込んでいる。


初めの課題は、「ふきの庭の存続」に「maisonふき」をどのように役立てるか。
もちろん「願いを共有する仲間」を募り、必要な作業を業務化する場にできれば最高だ。
例えば、「願いを共有する仲間」に参加することを入居条件にし、賃料を業務費用に充当する。
そんなアイデアから、僕は「ふきの庭倶楽部」の設立を思いついた。
改修した「maisonふき」の間取りは5LDKの住宅なので、共用部分を分かち合う会費と、5つの個室の面積に応じた賃料を支払う会員制のシェアハウスとして運営したい。
つまり、このシェアハウスの特徴は、会費さえ払えば共用部分を利用できること。
その延長には、会員制の宿泊施設的活用方法や古民家の利活用促進も見えてくる。
そこで僕は、「ふきの庭倶楽部」の正会員を「共有会員」と名付けることにした。
シェアハウスのみならず、隣接する古民家や庭も共有し、大切に思う仲間づくりを始めたい。

次の課題は、どうやって入居者=仲間を集めるか。
まず肝心なことは、知己や顔見知りに情報を届けて口コミで募ること、つまり、知り合いに自分の思いを伝えることだ。
その理由は2つ有る。
1つは、身近な家族にも自分の思いや願いを伝えるべき、特に権利や財産の継承に関する伝達は一刻も早い方が良いと思うから。
そもそも、仲間と家族の違いは何だろう。
昔の家族は、家を存続するための仕組みであり、家に属(族)するコミュニティだった。
それが、民主化の名の元に解体され、相続や扶養における血縁者に変質したため、土地や建物は継承資源から売却資産に変質した。
ある意味で、「土地に託した願いや思いを共有する人」とは、かつての家族を意味している。
なので、関心の有無に関わらず、身近な人から思いを伝え誘ってみるべきと僕は思う。

もう一つは、不特定多数つまり知らない人を対象にすべきでないと思うから。
この事業は、ふきの庭を継承してくれる仲間を求めているのであって、より多くの仲間が欲しいわけではない。
もちろん、収益を確保するにはより多くの客を集める必要が有るだろうし、そのために周囲と競う必要もあるだろう。
そのため、その戦いに勝ち続け成長し続けることが、存続に不可欠だと思われがちだが、勝者は必ず敗者を生み出す上に、全ての勝者は新たな勝者に入れ替わる。
つまり、勝敗と存続は別のことであり、競わないことこそが存続ではないか。
そもそも競うとは、ルールを守って同じことをやることで、その制約の中で勝利と言う「良い終結」を目指すこと。
不特定多数を対象にすれば、多くの競合と比較され、勝者と敗者(終結の良否)が生まれることは避けられない。
だが、僕が目指す存続とは、他を滅ぼすことなく誰もが存続することだ。
それは、存続を脅かす滅びの要因を無くすことであり、維持や保全はそのためだ。

滅びの要因を特定するためには、まず滅びを想定しなければならない。
土地や建物ならその「存在」若しくは「支配」の滅失だ。
「存在」としての土地は地球の一部なので地殻変動でもなければ永続するが、建物は老朽化や破損などにより劣化するので維持保全が必要だ。
だが、「支配」はヒトに帰属する所有権なので、寿命とともに消滅する。
なので、滅びの正体は、それを支配(所有)する人の滅びのことで、その支配によって実現したい願いを諦めることだと僕は思う。
考えてみれば、土地や建物を使って実現したいことのない人は、もともと喪失するモノが無いので、滅びる心配がないというか、そもそもすでに滅びている。
もしも何かを守りたいならば、まずは守るべきモノを持つ必要がある。
それは支配(所有)者の願いや思いのこと、思いのない人は居ないに等しい。

という訳で、そろそろまとめに入りたい。
古民家とその庭にリフォームした「maisonふき」を加え、を「ふきの庭」と名付ける。
「ふきの庭」の存続に挑む仲間たちを「ふきの庭倶楽部」と名付け、まずはオーナーKNさんと松村で設立する。
諸施設を利用するすべての方には、連絡先などを登録する「利用会員」になっていただく(入会金1,000円)。
「ふきの庭」を共有する会員を「共有会員」と名付け、月額10,000円の会費を負担しながら「ふきの庭」の存続と収益化に一緒に取り組む。
「maisonふき」は、「会員」専用の施設とし、宿泊利用や居住利用(共有会員のみ)を可能とする。
「会員」が主催するイベントには、不特定のどなたでも参加でき、自由に収益を得ることができる。
以上概略だが、「ふきの庭プロジェクト」の事業骨子がまとまった。
KNさん、いかがでしょう?