脱地主革命とは、封建社会から民主社会に移行するために封建社会を代表する地主の役割を社会と会社が引き継ぐと同時に、地主を継承せずに消滅させる革命だった。経済は活性化し、行政サービスは充実し、たとえ格差が拡大しても、強者が弱者を扶養する社会になるはずだったのかもしれない。ところが、地主の役割のうち自立や責任は誰にも引き継がれずに、土地を使いきれない所有者が残ってしまい、空き家の放置や社会の格差が拡大し、負担は増える一方だ。こうした課題に挑む新たな地主像を描き、新たな地主への移行や育成を開始して、新たな地主業を確立し、それらの永続的な継承の仕組みを稼働させなければならない。そこでこの章では、資源としての土地と、永遠の所有権について考察した結果を踏まえて、これらを使って地主が何をすべきかを考えたい。

 

まず、地主が担うべき役割の範囲についてだが、これまでも述べてきた仕事・家族・地域と考えたい。仕事とは土地の使い方、家族は仕事に携わる人たち、そして地域は関連する土地の範囲のこと。所有権はこれらを総括する権利だが、所有権を規定する民法がその全体像をよく示している。そもそも民法とは、法体系を公法と私法に二分した時の私法の一般法を定めた法律で、明治維新以後に生まれた。鎖国政策が崩壊した後に諸外国と締結した不平等条約を改正するために、民法典の制定を求められたので急いでこれを制定したようだ。初代司法卿である江藤新平が、箕作麟祥に対して、フランス民法を「誤訳もまた妨げず、ただ速訳せよ」と命じたのは、このような事情を背景としている(敷写民法)ようだが、その後ドイツをはじめ各国の民法を参照しながら改定を重ねてきた。

 

民法は5編から構成され、1~3編を財産法または契約法、4~5編を家族法又は身分法と呼ぶ。この本では、地主の役割を「仕事・家族・地域」で説明しているが、まさに民法が扱う領域と合致することがよくわかるので、ここでは民法の見出しだけを紹介しておく。

第1編 総則:通則、人、法人、物、法律行為、期間の計算、時効

第2編 物権(物権法):総則、占有権、所有権、地上権、永小作権、地役権、留置権、先取特権、質権、抵当権

第3編 債権:総則、契約(契約法)、事務管理、不当利得、不法行為

第4編 親族(親族法):総則、婚姻、親子、親権、後見、保佐及び補助、扶養

第5編 相続(相続法):総則、相続人、相続の効力、相続の承認及び放棄、財産分離、相続人の不存在、遺言、遺留分

 

私は本書を書くに際し、民法を参照したことはなく、これほど似た様な領域を取り扱うことになり驚いている。恐らく「所有」という概念は、社会の仕組みの根幹であり、特に市民の持つ所有権が重要だと思われる。市民という言葉が「社会の構成員」として主に多数や集団を意味するのは、それは誰もが同じような権利を持っているからだと考えられるが、土地所有権のような強大で絶対的な権利については個人差が大きいので、あまり取り扱われてこなかったように思われる。だが、少なくとも日本においては、土地所有権は誰もが持つことができる権利であり、土地所有者は地域社会の担い手として重要な市民として位置づけられるべきだ。だからこそ、かつて支配階級であった地主を市民として認識するための脱地主革命だったはずであり、今度は市民が新たな地主になることで地域社会の当事者となることを目指したい。

 

そのために、新たな地主が担うべき役割を時間ごとに3つにまとめ、それぞれが仕事・家族・地域に対してどのように取り組むべきかを提案したい。まず未来を描くことで、地主が中心となって永遠に滅びない不死身の社会を目指すこと。そして現在やるべきことで、不死身の社会の実現を目指し所有権をフル活用すること。そして過去を継承することで、これから行う取り組みがやがて過去となる時に次の世代に継承する仕組みを作ること。脱地主革命の結論は一つとは限らない。これはあくまで私案であり、他にも様々な役割があると思うが、大切なのはそれを明確に宣言することだ。