地主の国づくりを地主の役割ではなく、地主の事業「地主業」と名付けたい。地主が自分の土地が使われずに余ってしまうことが無いように、土地利用を促進する取り組みを「地主の国づくり」と名付けたのは、脱地主の結果、土地が余ってしまうのなら、それを防ぐことを地主の役割とするためだった。確かにこれまでの地主であれば、土地が生み出す収益はあくまで不労所得だったので、この国づくりのような取り組みをしても、あくまでボランティアと認識されていただろう。だがそれは、土地活用を資産運用と認識するためであり、土地を資源として提供し、その利用収益を得る仕事と考えれば、地主の国づくりは立派なビジネスだ。そこでここからは、「地主の国づくり」を「地主業」と名付け、国づくりの内容に沿って、その事業内容を紹介する。

 

まず、土地の開放は、土地や建物の未利用部分を閉鎖せずに開放することで、誰でも入れるようにすることで、挑戦の機会を得ると同時に失敗から救済される権利を提供するのが目的だ。これまで土地や建物の使われていない部分は、ほとんど閉鎖されていたが、それは安易に解放すると不法占拠や器物損壊などのリスクがあり、時計な管理コストがかかってしまうからだ。また、開放部分に来場者があれば、その安全や衛生を確保するためにも、環境整備が必要となるうえ、冷暖房や照明などの建物が閉鎖的になっているのは、プライバシーやセキュリティを守るためとされ、まったく問題視されていないが、隣人が誰かもわからないような地域では、暮らす人たちの孤立を高め、むしろ新たな危険を生み出している。だが、事業化に際しては、施設に受付を設け、常駐管理者を配置し、毎日無償で開放するのは、新たな訪問や利用を促すことで収益を獲得するためでもあることを忘れてはならない。事業は常に、最高の成功を目指す必要がある。

 

土地を活用して交流を促進することにより、市民の孤立を解消するのが、国づくりの目指す最低の成功だ。だが、顔見知りとなった人同士が助け合うことで、金銭依存から脱却し、より高度な欲求を創出するのが、地主業の目的だ。例えば、若者の間でシェアハウスの人気が高まったのは、交流による価値の創出だ。一般のアパートやマンションより少し割安でも、風呂屋便所は共用で、プライバシーが守られているとは言い難いが、交流による安らぎや楽しさがそれを十分に補っている。その結果、個別に賃貸するよりも、全体的な他賃収入は高くなり、サブリース(又貸し)による事例が急速に増えてきた。だが一方で、こうした工夫は土地の使用者側の取り組みであり、極端に言えば所有者に気付かれないように行われている。昨年施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)は、せっかく新たな空き家活用法として注目を集めたのに、所有者自身の取り組みが少ない上に、多くの事業者が所有者の理解を得られず、一向に盛り上がらない。

 

開放された土地を訪れ、そこで出会った人と交流するうちに助け合うだけでなく、そこをいつでも帰って来れる所属先にすることが国づくりの目指す最低の成功だ。だが、国づくりが目指す「帰属意識の醸成」とは、ビジネスが目指す「顧客の囲い込み」と同じこと。したがって、土地や施設を拠点とする活動を推進し、参加者が加盟するコミュニティを生成するのが地主業の役割となる。すでに説明したとおり、所属とは所有の一部であり、芸能人を分かち合うファンクラブやテニスの楽しさを分かち合うテニスクラブなどのように、何かを分かち合う一員になることだ。そのためにはクラブハウスのような拠点を設け、そこをメンバーが家と思い、帰ってくるようにする。

 

これらの事業は、原則としてすべてが無料サービスなので、実施するには財源が必要だ。逆に言えば、その財源が無いために、民間個人が土地や建物の開放や交流促進などできずにいる。だからと言って、道路や公園などの公共空間は全ての人に開放されているため、むしろ危険だらけだ。公共施設が市民に開放されているのは、税収を財源にしているに過ぎない。そこで、地主の事業の財源は、土地の収益を充当する。土地が稼いだお金はすべて土地のために使うという考え方だ。土地の収益権が生み出す収入についてすでに述べたが、それらの収入をすべて地主業の財源としたらいい。その代わり、外部への支出は最低限とし、地主本人や地主が雇用した人が業務にあたればいい。

 

こうした事業はすでに各所で始まっているかもしれないが、それを「地主の事業化」と位置付ける考え方は、まだ生まれていない。そこで、地主の国づくりの事業化に取り組む事例を紹介したい。一つ目は、IID世田谷ものづくり学校で、私が施設開放の意義に気付いた経験だ。二つ目は、地主業の非営利事業化:土地収益を不労所得にせず、保全・整備・利用促進する事業(笑恵館)。そして三つめは、地主支援・育成事業:土地利用事業を模索する会員制の地主(名栗の森オーナーシップクラブ)。現在はさらに土地利用方法の創出事業:地主が主催・審査する土地利用者の募集(名栗・森人間コンテスト)に取り組んでいる。地主業とはまさに地主の起業のこと。働かずに済む豊かさを捨て、働く喜びを得るために、地主のちからを使って欲しい。