地主業を確立することで、地主の国づくりという新たな事業ジャンルを明確にしたが、次に必要なのは、地主業に従事する人を明確にすることだ。たとえば、地主業に従事すると、土地を無償で使えるが、それは土地の利用価値を高め、土地を有償で使ってくれる人を増やすためでもある。そこで、地主の国は「誰もが土地を自由に使うことを目指す団体」になり、「その団体に参加することで地主の一員になれる」とするのが判りやすいと思う。そして、団体となる第一歩は、費用もかからず手続のいらない「任意団体」を作り、組織の規約や体制を整備することだ。だが地主の事業は、最終的には土地を所有する必要があるので、所有権を持つことができる法人格が良いと思う。法人格には様々な種類があるが、まずは事業の目的や特性に適した法人格の活用法を検討しよう。

 

先ほども述べた通り、法人は土地の所有者になることができる。法人名で土地の所有権を登記すれば、税金を払うのは法人の役目となる。地主とは「土地を売却しない所有者」のことなので、いつまでも土地を個人で所有していても意味がない。むしろ、所有者としてのすべてのリスクや責任を一人で背負うより、法人の所有にすることで、社員たちと分かち合う方が賢明だ。さらに法人とは、法律上の架空の人格なので、絶対に死ぬことのない不死身となり、相続そのものが不要となる。ただし、法人が所有する財産の持ち分を所有する人に対してはその持ち分に対して相続が発生するので、株式会社の場合は株式の相続に含まれることになる。これに対し、社団法人、財団法人、NPO法人などは、そもそも株式などの持ち分が無いので、国税庁による規定を満たせば、贈与税や相続税の対象とならないので、後で詳しく紹介する。

 

また、法人化することで複数のメンバーが構成員として協力する体制を作ることができる。事業の目的や内容だけでなく、構成員になる条件や組織の運営方法などについて定款や規約に定めることにより、構成員の権利と義務を明確にすることができる。新たな参加者を募るためには、法人格を持つことで組織が単なる地主の取り巻きでないことを示すことが必要だし、組織に所属する人々がコミュニティを形成することにより、交流を促進することも重要だ。そして、組織のメンバーを教育することで、日常から後継者の育成が可能となり、役員を選出して経営の中枢を担う仕組みを作ることにより、後継者の選出もできるようになる。事業を永続させるには、永続可能な組織の仕組みが不可欠であり、法人化はまさにそのためだ。

 

また、一つの法人に一人の地主という制約は全くない。複数の所有者が法人に加入し、土地を法人所有とすることで、土地の共同所有と共同経営が実現する。すでに不動産収入のある所有者であれば、その収益を使って新たな土地の国づくりに挑めることはすでに述べたが、その取り組みを法人化すれば、さらに多くの所有者の参加を募り、国づくりの範囲を広げることができる。その逆に、土地を利用できずに悩んでいる所有者の相談に乗ったり、参加を促すこともできる。細分化された小さな土地では、新たな利用は難しくても、周辺の土地と連携すれば全体の一部として利用されるかもしれない。もちろん土地を所有していなくても、土地利用のノウハウを持つ事業者の参加も歓迎だ。法人が所有する土地が国土なら、法人はその政府の役割を果たすだろう。

 

実際に法人化するには、法人格の種類を選ぶ必要があるが、それは事業の目的に関係する。そもそもビジネスとは、「事業目的を実現するために、ヒト・モノ・カネ・情報などを駆使して頑張ること」で、ヒト・モノ・カネ・情報は目的では無い。むしろ生きるために必要な「食事、呼吸、睡眠、排せつ」のようなもので、無くてはならない必要ではあるが、満足すべき十分ではない。もしも地主法人の目的を「相続のない永続性」とするならば、株式会社は株の相続があるので避けた方が良いだろう。みんなが社員となって国づくりに取り組むのが社団法人の仕組みだが、土地を基本財産にして理事会が経営し、それを評議員が監視するのが財団法人の仕組みだ。そしてNPO法人は国が定める範囲内で非営利活動に取り組む必要があり、この事業を特定非営利活動として行政に認証してもらう必要がある。だがすでに、この事業に類似した事業に取り組んでいる法人もあるようだ。法人化は、法人の設立だけでなく、既存法人による取り組みも含めて取り組むべき課題だ。

 

そこで、地主業に関する法人化を促進する取り組みはすでに始まっている。だが、地主業の法人化の目的である土地所有の法人化を実現するためには、所有者に土地を手放してもらう必要がある。一つ目は、土地所有の法人化に関する取り組みで、様々な土地保有法人の可能性を模索している。二つ目は、土地寄付の受け皿法人:持分の定めの無い法人により贈与税を回避する(日本土地資源協会)そして3つ目は、土地資源に所属する家族:所有権を共有するコミュニティで運営業務を継承する(笑恵館クラブ)実は地主業の法人化は、地主業を家業とする家族の創出だ。これまでは血縁関係が家族を繋いできたが、財産を共有し継承していくことが、新たな家族の仕組みかも知れない。