初めての散策(1607例会①)

7月10日日曜日午前10時、天気は快晴。「みんなで山のオーナーになろう!」という不思議な呼びかけに、9人の参加者が集まった。そのうち8人はFacebookに反応して下さった方たちで、7人は初対面という、新規プロジェクトにふさわしい上々のメンバーだ。集合場所の無料駐車場で簡単な趣旨説明を行った後、車に相乗りして早速現地に向かった。名栗湖周囲に民家は無いが、登山や自転車など、山を楽しむ人たちが続々とやってきて、周辺道路沿いの余地はすでに車でいっぱいだ。車の置き場探しの間、少し待っているだけでも日差しがきつく、クラクラしてくる。ようやくみんなが揃い、登山口から森に入ると、そこは木陰の別世界。「よーしっ!」と歩き始めたが、次第にみんなの顔には戸惑いの色が浮かぶ。「こんな急斜面で、何ができるんだろう」・・・。

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山が急斜面だということは、理屈の上ではわかっていた。僕も前回来た時に、それは理解したつもりだった。でも実際に仲間を誘い「さあ、ここで何をやろうか?」と言いだそうと思った瞬間、「こんな斜面で何ができるんだ?」という思いで頭がいっぱいになってしまった。googlemapの航空写真によれば、中央あたりに伐採されたような明るい場所があるはずだから、「まずはそこまで行ってみよう!」と気を取り直して歩き始めた。だが、斜面の上の方が明るくなっているようでも、そこに上る道などどこにもない。まずは、登山道沿いに、森の端まで歩いてみようということになった。

ご神木を右手に見ながら、明るいはずのあたりを超え、さらに進むと登山道を横切って、斜面の上から下の沢まで滝のように駆け降りる小さな谷を渡った。なるほど地形図によると、その向こうのごつごつした岩の尾根がわれらの森の境界らしい。だが、その最後の尾根はまさに岩の塊だ。手を使い這うようにしなければとても登れない。みんなの口数がだんだん少なくになってきた。こりゃあ、大変な山だぞ。

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麓から歩くこと約20分、とにかく境目までたどり着くことで「僕たちの森の全体」を少しイメージできるようになったので、ご神木まで戻ることにした。登りと違い、下りはグッと視野が広がって、周囲を眺める余裕も出てきた気がする。ご神木まで降りてくると、「明るいところまで登ってみるか!」と元気な数人が斜面を登り始めた。だが、明るいところは広葉樹がまばらに生えているというだけで、平坦なわけではない上に足元も崩れやすい。つまり、航空写真から「明るい広場」を勝手にイメージしていただけのこと。むしろ、植林された針葉樹の方が、手がかりや足がかりがあって、歩きやすいのかもしれない。

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ご神木の近くから、谷側に伸びる分かれ道があり、ちょっとした尾根道の先が行き止まりの小スペースになっていた。そこにたどり着くまでのちょっとした道のりを進み、袋小路で一息ついて回りを見渡しながら感じたのは、「僕らが求めていたのはこういう場所だ」ということだ。つまり、少しぐらい苦労して歩いても、そこにたとえささやかでも「憩える場所」があれば簡単に報われる。でも、どこまで行っても「たどり着いた気がしない道のり」では、耐えられないし行きたくもない。たとえささやかでも、そんなわがままが満たされる必要性を痛感した。そんなことをぶつぶつ議論しながら歩くうち、ふと自分たちが歩いている登山道に目を遣った。

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よく見ると、登山道はその両側に杭が打ってあり、斜面の上から崩れてくるのを防ぐと同時に、道自体が下に崩れないように支えている。つまり、かなりの大工事を施して苦労して作ったものに違いない。「関東ふれあいの道」として、平日から多くの人が行き交うこの登山道を、これまでは「僕らの山を通らせてあげていた」くらいに思っていたが、とんでもない。むしろ「よくぞこの山を通り道に選んでくれた」と感謝しなければ罰が当たると思えてきた。それは、山の活用に欠かせないのは、山へのアクセス=道だから。おのずと僕たちは「道の大切さ」について論じ始めた。「けものみち」という言葉があるが、「けもの」ですら道を歩くということだ。「歩きやすい場所」、いや「歩ける場所」を確保することが、このプロジェクトの第一歩だと確信した。

まずは麓の平坦な場所に、ささやかな拠点スペースを確保して、そこから道を作りたいと思う。どうやって斜面に立ち向かう道を作るのか、場所によってその方法は様々考えられる。崩れやすい斜面はロープを手掛かりにするとか、木立の中は木々を手掛かりにすればいい。そして、足元を解りやすくするために枝を切り、草を刈ったり踏んでみよう。道幅は15センチもあれば上等だ。アリが地中に穴を掘り進めるように、僕らは山の斜面に通り道のネットワークを作りたい。そして、これまで誰も行かなかった場所にたどり着けるようになった時、そこに小さな場所ができるのだと思う。まず自分だけの場所ができなければ、自分たちの場所は生まれてこない。

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だんだんやる気がわいてきた。今度は小さな釜と、のこぎりを持って来よう。メンバーの一人が「後輩が近所で木こりをやってるので、今度誘ってみます」と言い出せば、別のメンバーが「カヌー工房で電動のこぎりを貸してくれるそうです」と続いてくれた。はじめはどうなることかと思ったが、みんなの目つきが少しけものになってきた。次回の活動は、7月24日(日)を予定している。なんだか待ち遠しくなってきた。

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