ざれ場歩き(1702例会)

2月例会のテーマは「名栗の森の散策路ルート探し」ということで、関東ふれあいの道から尾根道に登るルートを求めて森に入った。中腹にあるご神木の上の森が、明るく開けて見えるのが以前から気になっていたので、この際だからそこを登って見ようということになった。これから春を迎えるにあたり、山菜取りができるかどうかが気になるところだが、名栗の森は全体的に杉が植林されているので、陽光が余り地表に届かず、あまり期待ができない。だから、明るい部分はひょっとすると広葉樹の森で、山菜がいっぱい生えていると考えられなくもない。という思惑もあり、我々は、とにかく明るい森を目指し、急斜面にしがみついて登り始めた。

下草の枯れた冬は、さすがに夏よりは歩きやすい。だが、たとえ虫がいなくても、枯れた植物のとげは一層固くなっていて、軍手を突き抜けて襲い掛かってくる。でも、密植された杉の木が手掛かりとなり、倒された間伐材が足がかりとなって、何とか急斜面を登っていくことができた。

やがて林の向こうに、ご神木の上部に当たる明るい場所が見えてきた。だがそこは広葉樹林という訳ではなく、むしろ小さな低木しか生えていない不毛な場所だ。伐採の跡や切り株も見当たらない、まさに山の「はげた部分」に見えてきた。

明るい斜面を歩いてみると、その理由がすぐに分かった。そこは、山岳用語で「ざれ場」と呼ばれる細かい礫(れき)に覆われたエリアだった。登ろうとしても、ずるずると崩れ足を取られてしまい、なかなか前に進めない。そしてよく見るとあちこちに動物のフンが固まって落ちている。ブルーベリーのような小さな丸いのはシカの糞、少し長細いのは他の動物のものらしい。メンバーのTさんが「ここはシカの糞場だね」という声が聞こえてきて、なんだか力が抜けてしまう気がした。

しかし、だとすればここに通じる獣道(けものみち)がどこからか通じているに違いない。我々はさらに上にある尾根道を目指し、さらに登り始めた。ざれ場が終わりまた杉林に入り、低い目線で這いつくばって登っていくと、左右に道らしき部分がつながっているのが目に飛び込んできた。「これが獣道か」と、すぐに感じ取ることができた。さっそくメンバーに声をかけ、目印をつけながら道を探った。そしてとうとう、ざれ場上部から尾根道につながるルートを見つけることができた。

かくして今日は、「杉林の急斜面」から「ざれ場」を通り「けもの道」を経由して「尾根道」に出る・・・というルートを見つけることができた。標高差にしてみれば百数十メートルのささやかな斜面だが、普通の登山であれば山頂付近でしか味わえないような行程を、こんな山麓部分で体験できるという訳だ。これって、面白いことではないだろうか。

名栗の森は、名栗の山全体から見ればほんの小さなエリアだが、その中で多様な地形やルートを如何様にも探し出すことができるのは、まさに自然のなせる業だと僕には思える。また一つ新たに加わった体験の名前を考えながら、我々はすっかりお馴染みとなった尾根道を下りていった。

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