尾根歩き(1608例会)

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名栗の森オーナーシップクラブは、埼玉県飯能市名栗湖に接する山林のオーナーが、所有者として山林を経営する仲間を募るプロジェクト。月に1度、地元での例会(午前)+現地での活動(午後)を行っていく。1年を通じて現地を体感することで「自分の山を知ること」が、メンバー全員・山林所有者として初めにやるべきことだと考えた。なので、このレポートは「山林所有者」の目線で書いてみたい。第1回目の例会を開催する8月28日(日)は、前日まで雨が続き、週明けには変わり種台風10号が接近するとのことで、山林の活動が天候に左右されることをハラハラしながら痛感した。しかし、当日を迎えてみれば曇り空のおかげで8月なのに涼しく爽やかで、登山客も少なく駐車スペースもゆったり確保できたので、例会は午後に回しまずは山に向かうことにした。

今回の活動は、オーナーのOさんが事前調査で発見した「尾根道」を使って、われらの森を縦走すること。初めにその意義を説明しておきたい。これまで2回、説明会を兼ねて山林内部を探索した結果、「山は道がないと歩けない」というのが素朴な結論。どんなに険しい断崖も、そこに道や階段さえあれば、鎖を伝ってでも登れるのに、夏は特に草木が生い茂り、道の無いところを歩くのは容易ではない。名栗の森には、さいわい「関東ふれあいの道」という人気の登山道が通り、山林下の沢に沿って縦走するのは可能だが、そこから上に上るのは山林のプロや健脚者とは限らない所有者には不可能だ。ところが、それを越えて尾根まで登ると、そこには自然の道が開けていると言う。調査では、最上部から降りてきたという尾根道を、Oさんの案内で登って見ようというわけだ。

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尾根の入り口は名栗湖に突き出た尾根の先端で、厳密には境界の向こう側(隣地側)にあった。石積み擁壁の端が団状になっているだけのどこにでもあるような光景だが、そこを上がると確かに細い道があり、すぐに尾根筋にたどり着いた。地図で見ると山の所有境界のほとんどは、尾根と谷に一致している。実際山に入ると、そこは斜面と平地、尾根と谷でできている。現地に行けば当然のことだが、斜面と平地は面で、尾根と谷は線だ。雨水は尾根を境に左右に分かれ、やがて谷に集まり川になる。尾根を境界にする合理性に感心できるのは、「所有者マインド」のおかげだと感じる。尾根部分は、左右の斜面に比べれば格段に緩やかで歩きやすい。斜面の中腹に作られた登山道とは異なる「自然の道を歩く感覚」が、元気が出るような心地よさを与えてくれる。

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尾根の曲がり角には、必ずと言っていいほどシンボリックな樹がそびえ立つ。おそらく境界の目印として伐採を免れ、周囲の植林とは異質なたたずまいとなったのだろう。樹種も杉ではなく松であったり、ゴッホの絵のようなねじれ模様の木肌だったり、落雷のせいか、途中でばっさり折れている樹もあった。だがいずれも、誰の目にもはっきり判る「目印の樹」が、尾根の曲がりごとに立っている・・・というルールに気付いた時、また1つ「所有者マインド」のスイッチが入った気がした。名栗の森の最上部にたどり着いた時、そこには一段と大きな樹が僕たちを出迎えてくれた。登山道に祭られていたご神木とは対象に、山中の境界をつかさどるこの樹にも「ご神木」に通じるオーラを感じた。すると、参加者のJさんがリュックからほら貝を取り出して吹き始めた。これも以心伝心、メンバー全員が心を合わせた瞬間だった。

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斜面より楽とはいえ、約900Mの尾根歩きは1時間ほどで280Mを一気に登るので、一同はへとへとだ。記念写真を撮って、ゆっくり休憩したあと、帰りは景色を見ながら降りてきた。前日までの雨の湿気か、森の中は霧が立ち込め、尾根に沿って生える苔の緑が際立って神秘的な景色になる。でもこれは「8月28日雨上がりで気温が下がった日の景色」に過ぎない。きっと森の景色は季節の変化に、日々の天候が加わって、同じ日など無いのかもしれない。メンバーたちは、思い思いにお気に入りの場所を見つけ、写真を撮ったり佇んだりしながら尾根を下った。最後の石段を下りて道に出ると、空はすっかり晴れ上がり明るくなっていた。

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例会会場に戻り弁当を食べながら、僕は改めて「テナントマインドを捨て、所有者マインドで考えてください」と話をした。すると参加者から「所有者マインドはまだよくわからないけど、今日はテナントマインドが染みついた自分をはっきりと感じました」というコメントをいただいた。僕だってまだ、偉そうなことは言えないが、「自分の森」と思う心が、森の見え方や感じ方を変えるのは間違いない。多くの山林が今もなお新たに放置され、捨てられている現状を変えるのは、僕ら自身が所有者という当事者になることから始まるのだと、今日もまた確信した。

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