地主の事業化2503

地主の事業化

土地価格が高騰する一方で、空家や放棄地などで地域社会が衰退しているのに、今外国人旅行者たちは「世界一魅力的な国」を求めて押し寄せてきます。
もしも昔の人が、このちぐはぐな現状をみたら「地主は何をしてるんだ!」と憤慨するでしょう。
でも、明治維新で封建制度に決別し、地主制度を廃止したことを後悔する気はありませんし、土地を所有しているかどうかに関わらず、土地を有益に使うことが大切なことは承知しています。
そこで私たちは、あえて捨て去った地主制度を思い出し、身分や特建でなく誰でもできる「仕事としての地主」を提案します。

1.脱財産 ・・・所有から使用へ

かつて豊臣秀吉は、全国の農民を耕作者として登録し、検地帳に記入することで身分を確定する「太閤検地」を実施しました。
その結果、農民には耕作地を自由に耕す権利を与え、それに見合った年貢を課しました。
つまり、農地の所有権は年貢のノルマとセットで与えられ、農民は働くことで生きてきました。
ところが明治維新で年貢が廃止され、地租(後の固定資産税)に変化すると、人々は働くだけでは生きられずお金の時代になりました。
あらゆる価値が換金され流通蓄積されるようになると、土地は不変の価値=不動産として、盛んに売買されるようになりましたが、それは土地そのものでなく「納税義務とセットになった使用権」であって、米の取れ高に比例して年貢を課したのと同様に、生み出す収益に比例して課税するために評価を上げているに過ぎません。
その結果、土地の所有は貧富と連動するようになり、収益を生まない使用者は土地を所有できなくなりました。
この問題を解決するには、地租改正からやり直す必要が有ります。
土地を財産としている限り、損と得が発生し、勝者と敗者が固定化することで格差が広がります。

2.非営利化・・・不動産から地球資源へ

そこでたどり着いたのが「土地収益の非営利化」で、土地の収益を誰のモノにもせず、土地のモノにすることです。
我が国の土地所有とは、金銭的には「固定資産税(及び都市計画税)を負担する」と同義なので、所有者は土地資源の維持実費の他には固都税以上に稼ぐ必要はありません。
なので、それ以上の賃料収入があれば、すべて土地資源のために使います。
もちろん、土地資源の価値向上に貢献してくださる方には、喜んでその対価を支払います。
ここで重要なのは、その「価値」が所有者の願いや思いであり、それを共有してくださる方は、もはやともに所有する仲間です。
非営利とは、全ての利益を配分せず、夢の実現に支出すること。
考えて見れば、所有権をお金で買うということは、所有者の夢を諦めさせるための手切れ金です。
例え土地を持っていなくても、自分の夢を所有者に熱く語り「共有」さえできれば、共に所有する「共有者」となって、自由に土地を使えるはずです。

3.共有化 ・・・個人所有から総有へ

夢や思いを共有することは、所有権共有のきっかけになるだけでなく、さらに大きなメリットを伴います。
まず、共有する仲間が増えることで、所有権の担い手が複数になれば、所有者の継承者が生まれやすくなります。
本来「相続」とは、全ての権利義務を引き継ぐことなので、そこには所有者の夢や思いも含まれるはず。
所有者の意に反して土地を分割したり売却することは、そもそも相続とは言えませんが、その主な要因は所有者が夢や思いを表明しないことかもしれません。
夢や思いという本当の価値を共有できなければ、誰もが知っている金銭価値を求めてしまうのも当然です。
また、価値観を共有できるのは所有者と使用者だけでなく、所有者同士の場合もあり得ます。
所有者同士が土地資源を共有すると、資源同士の交流や助け合いが実現し、資金の移動も簡単です。
こうして土地資源は、それを介して人同士がつながるだけでなく、人のつながりを介して土地同士がつながり、統合拡大していきます。
土地の財産化は、細分化しか生みませんが、土地資源の共有は細切れになった土地の再統合も可能にします。
決して世界を一つにするのでなく、思いの数だけ寄り添う多様な部分こそが地域社会だと思います。

4.脱相続 ・・・財産相続か事業継承へ

家賃や使用料などの土地が生む収益を非営利化し、土地を使って実現したい夢や思いを共有するのに、何の許可も手続きも不要ですが、所有者が死亡すると相続が発生し、遺産分割や相続課税に存続が脅かされます。
しかし、人間には寿命があるので、死は避けられない上にそのリスクは常にあり、これを回避するためには、不死身になるしかありません。
その答えが「法人化」であることは案外知られていませんが、そもそも個人より法人(会社)が信用されるのは、簡単に死なないからであり、法人が制度化されたのもそのためです。
さらに、非営利法人にすることにより、先述の非営利化と総有・共有化が同時に満たされ、土地資源の永続を目指す地主業が一気に実現します。
詳しい仕組みについては、法人の仕組みでご説明することにして、ここでは、法人化がもたらす「脱相続」について説明します。
脱相続とは、相続税を免れたり相続争いを回避する以前に、そもそも「相続」と縁を切ることです。
所有権を個人から法人に移すことにより、法人が存続する限り所有権は変わらずに存続します。
仮に、真の所有者である日本国が倒れ、他の所有者が現れたとしても、その所有者と目的を共有できれば、排除される心配はないと思います。
むしろ日本政府には、国民からの搾取とバラマキを辞め、世界から必要とされる国づくりに専念すべきだと申し上げたいです。