ついに待望のプロジェクトが始まった。
誰も買わない土地を買い、そこを起点に国づくりに挑んでいく。
そんなチャレンジの第一号が「みんなの裏山PJT」。
土地を買うということは、そこを利用したり、収益を得たり、より高く売却するためというのが常識だ。
だが、このプロジェクトはこれらの全てを目指さない。
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まず、購入物件について説明しよう。
場所は神奈川県横須賀市のある漁港にほど近い南に面した急斜面。
上下を住宅に囲まれた雑木林だ。
もちろん道路に面していないので、宅地であろうとも建築することはできない。
そもそも、誰かの土地を通らなければ辿り着くことすらできないわけだ。
その代わり、220坪の土地価格は10万円。
友人の登さんから、「こういう物件どう思う?」と相談を受けた時、僕の頭はターボチャージャーのように回転した。
早速現地を確認し、「死体の山でもない限り、購入すべき」と提言した。
登さんの土地探しに付き合う原さんに加え、地元出身のダンナを持つ廣川さんを誘い、ついに先日現地を訪問した。
そこでまず、その時の顛末をご紹介したい。
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はじめは、がけ地の上側の隣地からアクセスするために、呼び鈴を押して「お隣の土地の件ですが」と言いかけたところで「不動産はお断り、ガチャッ!」と門前払い。
だが、ここであきらめずに登さんが呼びかけ続けるうちに、奥様が姿を現したので、すかさず「私たちは不動産業者ではなく、ここを買うために見に来た者なんですが、この土地について、何かご存知ないですか?」と問いかけた。
すると、奥様の表情は少し和やかになり、「この斜面は所有者が亡くなった時にすべての相続人から放棄されたらしいわよ」と語りだす。
そこで「ありがとうございます、それではまた、購入してからご挨拶にお邪魔します!」と告げてその場を後にした。
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続いて、隣接する集合住宅の入り口脇の塀越しに、斜面を覗き込んでいると住人らしき女性がやってきたので、先ほどと同様の挨拶をした。
でも、集合住宅の住人に隣地のことを尋ねても仕方がないと告げると、「あら、ここは分譲よ」とおっしゃるので「なあんだ、れっきとしたオーナーさんじゃありませんか!」と答えると、嬉しそうにはにかんでいた。
登さんはじめ3人の同行メンバーたちは、僕のこんなやり取りを笑って眺めていた。
いや、正確に言えば、僕はあえてこのやり取りをみんなに見てもらい、気づいてもらいたかった。
これは「地主と業者の会話」でなく、土地所有に関する「人間同士の会話」だということを。
土地所有を論ずるのに、何の資格も免許も必要ないことを。
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その後、僕たちは階段道を降りていき、下側の住宅越しに斜面を眺めた。
結局この土地は、周囲の隣接地の協力なくして、利用どころか辿り着くことすらできないわけだ。
そんなことを話しながら歩いていると、またまた住民の女性と目が合って、楽しく話し込んでしまった。
隣接地には住宅あり、畑あり、でも空き家らしき家もあって、次第に興味が湧いてきた。
もしかすると、この土地を所有してもうまく利用できないかもしれないが、土地所有者として周囲の隣接所有者に語り掛け、所有者同士の交流ができるに違いない。
そうすれば、たとえ斜面を利用できなくても、空き家や畑を使わせてくれるかもしれない。
斜面に隣接する所有者達をつなぎ、小さな国づくりができるかもしれない。
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敷地を見に行った2日後に、登さんは購入申込書を提出し、プロジェクト名を「みんなの裏山」と命名した。
有志が資金を出し合って、日本土地資源協会が永続的に所有する。
そしてその翌日には、なんと近所に似たような斜面地の「76坪0円物件(抽選式)」を、登さんが見つけてきた。
もちろん全員一致で応募を決定し、みんなやる気満々だ。
使えない、儲からないそして売ることすらできない土地を所有することで、周囲の所有者達をつなぐ国づくりにチャレンジする。
大事なことは「国づくりは誰にでもできる」こと。
こんな土地をご存知の方がいたら、是非ともご連絡を!