オーナーシップとは「所有者らしさ」のこと。実際の所有者であるかどうかでなく、所有者として必要なことを備え持っているかどうかということだ。所有権とは、自分のモノを自由に使い、自由に稼ぎ、自由に処分できる権利というが、その権利を行使することがオーナーシップには不可欠だ。したがって、土地や建物を放置して空き家や空き地にしたままの所有者は、オーナーシップが欠如していると言えるだろうし、放置せずとも自由に使用できなければオーナーシップとは言えない。だから、放置せず信頼できる使用者に任せる所有者や、所有者の賛同の元に自由を得る使用者には、オーナーシップが備わっていると僕は考える。

 

所有物に関する自由とは、誰の許可も必要としないことだ。そもそも許可とは「禁止の解除」のことであり、「禁止の解除を必要としない=禁止が無い」ということだ。だが現実には「何の禁止も無い状態」など許されるはずもなく、すべての自由には責任が求められる。この「責任」を免れるため、人間社会は多くを禁じ自由を奪ってきた。そのため、多くの人は責任から解放されることを自由と勘違いし、この不自由を受入れているのだと僕には思える。賃貸とは、不動産の使用禁止を一定期間解除することであり、自分の家で自由に暮らすこととは程遠いが、「みんなと同じ、これまでと同じ暮らし」を続ける分には、あまり不自由は感じないだろう。

 

だがこの不自由は、新しいことをやるには致命傷だ。何をするにもいちいち許可を得る必要がある。ただ一方で、前例のないことを許可することは無責任に他ならない。お役人は融通の効かない石頭で当然だと僕はもう。むしろ、がんじがらめの禁止事項に守られた不自由を受入れておきながら、自由が欲しいなどわがままだ。自由が欲しければ、「自己責任」を宣言すればいいだけのこと。これがオーナーシップには不可欠だ。何をしても構わないが、何が起きても他人のせいにできないことが、オーナーシップの核心だ。禁止される側でなく、禁止する側になることがオーナーシップであり、その上で、禁止することの是非を論じたいと僕は思う。

 

先ほどお役人の話をしたが、彼らの役割は公共を担うこと。だが、公共の土地や施設は彼らの管理下にあるものの、彼らは決して所有者ではなく、むしろ我ら市民こそが真の所有者だ。だから道路を誰もが通行できる場所に、公園を誰もが憩える場所にするために、厳しいオーナーシップを発揮するよう求めているのは、私たち自身であることを忘れてはいけない。たしかに「自己責任」の考え方を導入すれば、公園はもっと自由な空間にできるかもしれない。だがそのためには、すべての市民がそれを受入れる必要がある。結局、すべての人が「自己責任」を宣言し、禁止する側に立たなければ、禁止を解除することはできるはずがない。

 

こうして考えると、公共の不自由や禁止を嘆く前に、まず自分自身の「自由と責任」を考える必要がある。所有者なら、何のためにそれを所有しているのか、その目的を明確にし、実現を目指さなければそもそも所有する意味がないのだが、土地に関しては多くの所有者が自ら購入したのでなく、相続などで土地を継承しているため、特段の目的を持っていない。たとえ目的をもって購入しても、継承者がいなければやがて目的は風化する。だが、そもそも継承者がいないのは、そこに目指すべき目的が無いためだ。自分の死後も目指し続けて欲しい目的があるからこそ、それに賛同する協力者が継承者となっていく。僕は笑恵館オーナーのTさんからこのことを教わった。田名さんの思いに共感した僕自身が、笑恵館を継承したいと思うようになった。

 

その意味で、オーナーシップは使用者側にも必要なものだ。所有者を支え、やがて引き継ぐ覚悟を持つ使用者がいなければ、オーナーシップは継続しない。考えてみれば、所有者は決して「自己責任」から逃れることはできない。だから、「自己責任」とは「所有者を引き継ぐ覚悟」を指すものだと言ってもいい。家族だからオーナーシップを引き継ぐとは限らない。むしろ、オーナーシップを引き継ぐ者を家族と呼ぶべきではないだろうか。たとえ賃貸アパートの住人でも、賃料を賃料と思わず、所有者と共にアパートの維持費を負担するパートナーになればいい。笑恵館で貸し手と借り手が交流するのは、だれもが目的を共有しオーナーシップを持つためだ。その関係はレンタル利用者、無料利用者へと広がっていく。そして、その輪を周辺社会に広げていき、みんなが緩やかな家族になることが笑恵館の目的だ。

 

オーナーシップは「所有者らしさ」のこと。これを継承し、広げていくことで、僕たち自身が「社会の所有者」になることを目指したい。だがそのためには、所有者であること=所有権自体を継承する仕組みが必要だ。賃貸だけでなく売買においても、目的を継承する人に売却すれば、オーナーシップは引き継がれていくのだが、それは簡単なことではない。たとえ無償で譲りたくても、高額な税負担を免れない。そこで僕は、この課題に挑むため、土地資源を所有者自身が活用する事例を集め、オーナーシップが目指す共通の目的をわかりやすくお見せすることから始めたい。まずは5月の下旬、最初の展示イベントを笑恵館で開催する。まずは有言実行を、今日は自分の背中を押してみた。