相続の辞め方

自分で購入した不動産なら、寄付してもほとんど税金がかからないことは、あまり知られていない。

その理由は簡単で、せっかく苦労して購入した不動産を、他人に寄付するような奇特な人はいないから。

だが、もしもその寄付する相手の法人が自分自身だったらどうだろう。

土地や建物を非営利法人の所有にすることで、相続せず世代を超えていつまでも活用し続けるのが僕の本業だ。

これまでは、主に先祖から引き継いだ土地をこれ以上分割せず、活用したいと願う方の相談に乗ってきた。

でも今日は、苦労してローンを払い終わった土地や建物の永続化についてお話ししたい。

不動産の寄付とは、個人や非営利団体に無償で譲渡することだ。

例えば1億円の土地を株式会社に無償で譲渡すれば、会社側には1億円の売り上げが発生して法人税が課税されるが、これが非営利法人であれば寄付収入となり課税されない。

ところが、そもそもその土地の所有者が相続など無償で取得した場合は、市価から取得費用(実費ないし5%)を差し引いた所得があったものとみなされて、譲渡所得税(10年以上保有していれば20%)が課税される。

無償で寄付するのに課税されるなんて、全く理不尽な税金だが、最大税率55%の相続税より少額ならば、十分検討の価値はある。

だが、今日お話ししたい「土地代を払って購入した人」にとって見れば、譲渡所得税などほとんど関係ない。

むしろ、多くの場合購入時より値下がりしているかも知れないのに、相続税は容赦なく課税されることになる。

僕は決して税逃れの提案をしているわけではなく、相続そのものを辞め、キチンと財産を継承しようと言っている。

特に土地は永久に減ることのない「地球の一部」だ。

確かにこの方法は、これまで多くの資産家たちが使った税逃れの王道テクニックだったので、一昨年の法改正で、厳しく取り締まられるようになり、非営利法人に対して「非営利徹底型法人」となることが求められるようになった。

そのため、多くの資産家たちがこの手法を諦めたと思われるが、これに飛びついたのが僕だった。

この法規制が取り締まるのは、一族による法人支配や便宜の提供の禁止であって、事業内容については何の縛りもない。

譲渡所得税とは、別名キャピタルゲイン税とも呼ばれ、不動産以外にも株式など価値が変動する資産を対象に、その値上がり益に対する課税制度だ。

したがって、常に額面通りの価値しかない「現金」については全く対象外なので、現金寄付も様々活用することができる。

不動産がうまく活用できなければ、買い替えも可能だし、一部を現金化して建設資金に充ててもいい。

一方、一族への便宜や利益配当など一切できないが、労働や業務への妥当な対価なら制約は無い。

事業継承とは、あくまで事業に従事して働くことであり、遊んで暮らす不労所得を得ることはできない。

だが、仕事でなくお金をもらうだけの後継者が、放蕩三昧で財を食いつぶしていくのは、当然のことだろう。

本当の財産とは、何もせずに楽に暮らせる金でなく、活用することで新たな利益を生み出す資源のことだと思う。

また、一族の独占を防ぐため、同族の役員が1/3を超えてはならないという規定があり、2/3以上は他人の構成員が必要だ。

だが、そもそも家族だけに依存する継承は困難であり、永続性を考えれば他人の参加は欠かせない。

むしろ3家族以上が連携すれば、この条件は簡単にクリアできる。

さらにいえば、互いが出し合った土地を売却してまとまった土地に買い替えてもよい。

つまり、複数の土地を一法人で所有することにより、様々なやり取りややりくりが自由に行える。

やっとの思いでローンを完済し、ようやく「小さな自分の国づくり」を楽しめる時期が来たのなら、その国を自分で作った法人に所有させ、続きを次の世代に託したらどうだろう。

63歳になった僕の周りには、そんな友達がたくさんいる。

こういう法人を作るなら必ず呼んで欲しいし、法人の作り方ならいつでも教えに行く。

そして、あなた自身の小さな国づくりこそが、僕が手伝いたいあなたの起業だ。

そうだ、相続なんかやめて、僕らの小さなバチカン(国)を作ろう!